特定非営利活動法人
全国要約筆記問題研究会 理事 佐藤 匡
全要研理事の佐藤です。岡山県在住です。今回は、私が関わっている研究の一端をご紹介させていただけるということで、ありがとうございます。
最初に全要研のほうですが「パソコン要約筆記の全体投影における表出画面の読みやすさ」を研究しています。この研究は、「要約筆記の表出には、読みやすい行数と文字数の組み合わせが存在するはずだ。またどれぐらいの表出量が読みやすいのか最適値があるはずだ」という仮説のもと、実験心理学からのアプローチで、読みやすさのアンケートに答えてもらうものです。2023年の実験では、次のステップとして、眼球の動きで客観的な読みやすさを調べる実験も行いました。この実験の概要は全要研ニュース2023年10月号に記事があります。
次にご紹介するのは本業(大学教員です)のほうで進めている研究のひとつですが、世間を騒がせたAIのChatGPTが、「音声情報のバリアフリー」に役立たないだろうかという研究です。少し具体的にご紹介します。まず、「要約していない文章(全文)」、私の個人的な定義としては、ひとはひらがなで聞いた文章を頭の中で分かち書き(読みやすくするため、文節などに空白を入れたりすること)とかな漢字変換していると考えて、分かち書きもなくひらがなで書かれフィラー(無機能語、ケバ、ええっと・あのーなど)もそのままのもの、を「全文」とします。以下は私が講義で話した内容を文字起こしした「全文」の例です。
「はいええっとじゃあいまからねあのそつぎ
ょうろんぶんのをーことについてちょっと
はなしをしておきますええっとしりょうは
あしりょうのまえにみんなきてるかなこん
どよねんになるのはええっとりゅうがくせ
いもみんなきてる?」
この文章を起点として話を進めます。
ChatGPTへのプロンプト(指示):「次の文章を漢字かな交じり文へ変換して。」
その結果:
「はい、ええっと、じゃあ、今からね、あの卒業論文のことについてちょっと話をしておきます。ええっと、資料は足りるの前にみんな来てるかな。今度四年になるのは、ええっと、留学生もみんなきてる?」
次のプロンプト:「この文章を文字量半分になるように要約して。」
その結果:要約すると、
「卒論についての話。資料と留学生は準備OK?」となりますね。
ここでの要約は、あくまでも一括した要約であり、要約筆記における逐次的で高度な要約とは考え方が異なります。しかし、プロンプトをうまく選べば、いろいろなことができそうです。たとえば、「フィラーを取って」とお願いすれば取ってくれます。前ロールもパッと作ってくれるかもしれません。
今回は、私の研究の一端をご紹介させていただきました。ありがとうございました。