公益社団法人 岡山県難聴者協会 会長 森 俊己
2006年12月13日、障害者権利条約が国連で採択されました。障害のある人が「他の者との平等を基礎として」人として当たり前の権利や自由を享有し、その一員として生活する社会を作りましょうという内容は、画期的なものだと感じました。日本国憲法は国際条約の遵守を定めており、条約の主旨に反する国内法の規定は修正される必要があります。法整備を経て日本が批准したのは、2014年1月20日。そろそろ10年を迎えます。
「障害が機能障害を有する者とこれらの者に対する態度及び環境による障壁との間の相互作用であって、(中略)社会に完全かつ効果的に参加することを妨げるものによって生じる」つまりこの条約は、障害を個人の心身の問題とする「医学モデル」ではなく、社会との関わりの中で考える「社会モデル」で捉えています。私たちには個人では乗り越えられない壁があります。しかし、社会の配慮を得ることで、その障害は障害でなくなります。
私は数年前から『笑点』というテレビ番組を楽しみにしています。この番組には、放送局(社会)が合理的配慮を的確に行うための環境整備として字幕がつけられていて、私は聞こえる人と一緒に番組の面白さを楽しむことができます。そこには、私の難聴という障害は存在しません。
障害者条約の国連採択にあたり、繰り返された重要なフレーズは「私たち抜きに私たちのことを決めないで」です。これは、行政や一部の有識者が勝手に決めてしまうのではなく、障害当事者の声を聞いてくださいという願いであり、何も特別なことを主張している訳ではありません。
ですが、国際条約である障害者権利条約も、整備された国内法も、まだ掲げられた文字でしかない現実に直面することが少なくありません。真の意味で実効性のあるものにする出発点は、当事者自身が声を出すことです。それを「わがまま」なことだとは思いません。
皆が、障壁を感じることなく暮らすことができますように。
「障害者権利条約のこと」
- 「井原要約筆記クラブの活動」
- 「基礎に戻って要約筆記の学習をしています」